ままらに茶屋

シャイな私たちの英語倶楽部 - introvertsのための英語学習法

良い発音ってどんな発音?あなたはどんな風に喋りたい?(番外編)

こんにちは。ままらにです。今日はちょっと脱線して、英語の発音、訛りやアクセントについて私が感じていることをお話しします。

スタンダードの英語は神じゃない

イギリス英語というと、何か漠然と、きちんとしたそういう正しい英語があるように聞こえますが、方言や訛りなど、とてもバラエティに富んでおり、常に新しい表現も生まれていて、実はとても有機的なものなのです。

前回、発音を学びたいのであれば、スタンダードと呼ばれているものから取り組むのが良いというようなことを書きましたが、これはあくまで、実際に発音を学ぶためのマテリアルが手に入りやすいということと、聞き手も理解しやすく、応用が利くからです。私は英語が好きなので、いろいろな土地の言葉、例えばCockney Rhyming Slangsなどにも興味があります(これについては非常にわかりやすい説明がこちらのサイトにあります)。でも正直言ってこれってあんまり応用利きません。これから入ってしまったら、イギリス国内ならまだしも、一旦外に出てどこか旅行に行ったらもう完全に「???」ですし、何よりはじめからハードルが高すぎます。これは地元で実際に生活して、生の会話に参加しないことにはマスターできない言葉です。

だからといって、スタンダードと呼ばれるRPやBBCの発音を絶対的な最終目標にすることや、あるいは神のように崇めることにもあまり意味がないでしょう。英語にはたくさんの方言や訛りあり、それぞれが魅力的なのです。

英国各地の生の英語に触れるならケン・ローチ監督の映画

ケン・ローチ監督の大、大、大ファンの私。監督の作品には重いテーマを扱ったものが多いので、観た後はとてもお腹いっぱいになってしまいますが、それでもなぜかもう一度、そしてもう一度と観たくなります。コメディーものも大好き。 

ところで彼は映画を作るときには必ず、舞台になるその地方出身の俳優を起用することにしているそうで、どんなに方言や訛りの真似をするのが上手な俳優でも、その土地の出身でない人はローチ監督作品でジモティー役はできません。本物にこだわる、彼のぶれない姿勢、本当に素敵ですね。ですから英国各地の生の英語に興味がある方は、彼の映画を観ることをお薦めします。例えば、「わたしは、ダニエル・ブレイク」では前回少し紹介しましたGeordie英語、「麦の穂をゆらす風」では南アイルランドのコークの英語などが聞けます。ちなみに彼の作品には英語圏で上映されるときにも、英語の字幕が付けられることもあるそうです。

「わたしは、ダニエル・ブレイク」I, Daniel Blake(2016年)

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「麦の穂をゆらす風」The Wind That Shakes the Barley (2006年)

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「エリックを探して」Looking for Eric (2009年)

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「th」?「f」?「正しい話し方がある」という考えは危険!

これは昨年の出来事ですが、BBCのアナウンサーが本来ならばthと発音すべきところをfと発音したと視聴者からたくさんのクレームがついたそうです。これは典型的なロンドンの訛りで、問題になったのは宝くじのひとつであるThunderball。これをThunderball ではなくFunderballと発音した!というわけ。ご本人のRussell Evansさんはロンドナーのアクセントを売りにしており、クレームをつけてきた保守派の視聴者に向けてこう言い放っています。

The idea that there is a “correct” way to speak is the sibling of the perspective which says there is a correct way to look.

                                                                                    - The Guardian, 29 Sep 2017

「正しい話し方がある」という考えは、「ものには正しい見方がある」という考え方と同じ類のもの。

アクセントは私たちのアイデンティティー

私も同感です。ラッセルさんのようにリアルな英語を話す人の声がBBCで聞こえてくるのは若い世代に勇気と希望を与えることでしょうね。

アクセントは私たちのシグニチャー、指紋のようなもので、唯一無二のもの。私たちのアイデンティティーなのです。それがRPとは程遠いものであっても私は、それはそれで愛すべきものだと思っています。確かに、あなたのアクセントがあまりに独創的で、誰もあなたの言うことをわかってくれないというのでは困りますから、クリアに発音する努力はやはり必要だと思います。そして一つの単語も、イントネーションの違いで意味やニュアンスが全く違ってしまったりすることもあるので、その辺りはきちんと身につけなくてはいけません。また、前回書いたように、ネイティブの発音で英語を話すほうが、日本語の発音で無理やり英語を話すよりもスムーズにいくということも忘れないでください。

お師匠さんはセレブ!? 必聴!キリアン・マーフィーの朗読するイェイツ

自分に関していえば、私は語学をやるなら発音も含めて総合的に学びたいと思っています。その方が断然やりがいがあるし、楽しいからなのですが、困ったことに私は環境にすぐ影響を受けてしまうので、身近にいる人のアクセントがいつの間にか感染ってしまっていることがよくあります。イギリス人の地域の訛りだけではなく、ドイツ人訛りやスペイン人訛り、ロシア人訛りやブルガリア人訛りになってしまうこともあり、ドイツ語もスペイン語もロシア語もブルガリア語も実際には話せないのでおかしな話です。Geordieのお客さまから「君のそのアクセントはなんだ、フレンチか?」と聞かれたこともあります。これは完全に主人の影響で、フレンチじゃないけど大陸訛りが付いちゃっていたのね。

もしあなたが私のようにすぐに感化されてしまうタイプであれば、発音トレーニングに誰か影響力のある、憧れの人を一人持つと良いでしょう。有名人だとインタビューも探せば見つかりますから、それを教材にしてしまいましょう。その人をお師匠さんのように慕い、いっそのこと思いっきり影響を受けてしまうのです。 

ではぜひこちらをお聴きください。

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上記、ケン・ローチ監督の「麦の穂をゆらす風」主演で、南アイルランドはコーク出身のキリアン・マーフィーがイェイツの「When you are old」を朗読しています。この朗読ではあんまり強くアクセントが出ていませんが、最後のstarsのところでアイリッシュRがすこーしだけ聞けます。これがまた美しすぎて鳥肌もの。あんまりに素敵なのでご紹介しちゃいましたが、実は英国で度々行われる、英語の訛りに関する調査では、アイルランド訛りが一番セクシー💖と何度も栄冠に輝いているんですね。特に北アイルランド訛りが人気です。私もアイリッシュの明るい、一瞬キラキラっとするRの発音が好きです。

こんな動画も見つけてしまいました。

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もしアイルランドにお引越しとなったら、これで少し予習していくときっと役立ちますね。

シャイなあなたがパーティーで使える秘伝の技

でも、どんなに発音が完璧でも、本当は何を考えているのかちっとも見えてこないという人と、発音はこってこての日本人でも(イタリア人でもクロアチア人でもなんでも構いませんが)、実にチャーミングで、心と心が通じ合うようなおしゃべりができる人と、どちらとお友達になりたいかと訊かれたら、普通の人はやはり後者を選ぶと思っちゃうんですよね。でもどうしたらそんな風にチャーミングにおしゃべりができるようになるのでしょうか。まだ私はちゃんと英語が喋れないから、とついもじもじしてしまう。日本語だったらもっとちゃんと自分を表現できるのに、と解ります、その気持ち。

海外に住んでいると、よくパーティーというものに招待されます。シャイな私たちにとって、知らない人ばかりのパーティーって苦痛以外のなんでもない。一人でいるのも居心地悪いけど、誰かが英語でペラペラ話しかけてきたらもっと困る。フレンドリーに話しかけてくれてありがとうって言いたいところだけど、相手は自分が理解していないのに気づいていないよーっ💦というとき、焦りますよね。

今勉強中のフランス語で私はこうしています。もうはじめのうちは仕方ないと割り切って、先にお断りを入れてしまうのです。そう、ちょっとだけ頑張ってこう言ってみるのです。

Sorry, I don’t speak English very well…そしてYET.と付け加える。YETと言うときは一呼吸置いてからとびっきりの笑顔で言うのが良いでしょう。こうすると少しばかりのユーモアが加わり、あなたが今英語を学んでいて、しかもそのうちきっとうまくしゃべれるようになってやるというポジティブなエネルギーも相手に届いてくれるはず。相手もそれを聞いたら、おそらくゆっくりはっきり話してくれるでしょうし、英語を勉強しているということがわかったのでそれを糸口に何か面白い会話が始まるかもしれません。けれどもこの一言を言うときには優しい気持ちでいいましょうね。ただ早口でつっけんどんに言うだけでは「もう私をほっといてよ」的な拒絶にも聞こえかねません。

終わりにここで、本当に使える秘伝の技を伝授しましょう。ではちょっと片手を胸に当ててみてください。両手が空いているのであれば両手でもいいです。はい、それだけ。この格好で、伝えたいことを片言でもいい、自分の言葉で話す。あなたのお顔は笑顔だったり、とっても困った顔をしていたり、話す内容によって違うと思いますが、相手にはあなたが、あなたの心にある、本当のこと*1を言っているのだと伝わります。ハートのあるところ*2に手をやると、ハート同士の会話ができるというわけ。ぜひお試しあれ。
最後にもうひとつ、ちょっとドキドキするかもしれませんが、ちゃんと相手の目を見て話せたらより好印象ですよ。

では!

*1:ただし、心にもないことを言っていたら、動作と言葉がちぐはぐになって、ちゃんとバレる仕組みになっていますのでご注意!

*2:手を当てるのはあくまでも自分の胸にしてね!