ままらに茶屋

シャイな私たちの英語倶楽部 - introvertsのための英語学習法

英語の「けもの道」を作ろう


Queen - Radio Ga Ga (Official Video)

 

習慣を味方につけた金メダリスト

元競泳選手のマイケル・フェルプスさんがイメージトレーニングを身体的なトレーニングとともに習慣として取り入れていたことはよく知られています。彼があれだけのメダルを獲得できたのは、イメージトレーニングをしながら、習慣というものを味方にできたから。朝晩のイメージトレーニングに加え、ストレッチ、ウォーミングアップ、実際に水に入って泳ぐ、といった一連の行動を毎日地道に繰り返すことで、それを習慣として自分の一部にしてしまったのです。彼はオリンピックの本番でも、この習慣を崩すことはなかったそうです。つまりオリンピックの本番でさえ、この習慣の延長として捉えることで、自分らしい泳ぎができたのです。

ではこれを語学に置き換えて考えてみましょう。
文法も、読解力も完璧、なかなか良い文章を書ける。なのに、なぜか話そうとすると固まってしまう。これは海外の語学学校で出会う典型的な日本人の姿です。何を隠そう、私自身がそうでした。英語は好きだったので、中学、高校の学期末テストで他の教科は落第点に近いものしか取れなくても、英語だけはほぼ毎回満点。なのに…
たしかに日本にいると英語を話す機会はそれほど多くは訪れません。ある程度自主的に英語環境に飛び込んでいかなければ、日本語だけで必要なことはほぼまかなえてしまいます。

最近ではネイティブスピーカーの先生が来てくれる中学や高校もあるようですし、「英語村」なるものもオープンしたようですが、私の中学、高校時代の英語の授業は、読み、書き、文法が中心で、会話の練習はNHKのラジオやテレビの番組で自主的にやるしかありませんでした。まじめにこつこつやっていればこれでも語彙は増やせるし、しっかりした文法の基礎も身につくと思います。でも圧倒的にinput が多くて、output が少なすぎる。食べるだけで出さないというのは不自然だし、健康的ではありませんね。語学も、入れたら何らかの形で外に出してあげるようにすると、自然に自分のからだの、そして生活の一部として身についていくのです。

喋れるようになるには、まず喋ろう ~ ストレッチ & 筋トレのすすめ

Output、外に出してやる主な方法としては話すことと書くことがありますね。どちらもシャイな私たちには少し勇気のいることですが、アプローチを少し変えるだけで、楽々できるようになります。まずは話すことから見ていきましょう。

実はこれはそれほど難しいことではありません。独り言でもいい、自分の言っていることの意味がわからなくてもいい、とにかく喋ることです。英語を話すのは難しい、というカチコチになった頭をほぐすストレッチと、英語を話すために実際に必要な筋肉をトレーニングすることのふたつをまずやってみるのです。後者は意外に軽視されているのですが、日本語を話すときと、英語を話すときとでは口の周りの筋肉の使われ方が違います。私は夏休みなどで帰省して、ちょっと長く日本語生活を送っていると、こちらに戻ってきたときに口が思うように動いてくれなくて毎回困ります。英語でたくさん喋ることで脳と口の周りの筋肉を繋げる「けもの道」を作るのです。つまり、習慣づけをするのです。

では私が実際にやってみたことをご紹介します。

貧乏学生時代のお友達 ~ GAGAくん

貧乏学生だった私は、とにかくけちんぼうで、何を買うにも数週間悩んでから決めるという徹底ぶり。テレビやラジカセにしても、友達に英語の勉強になるから、と強く進められて買うまでにずいぶんと長い月日が経っていました。そんな私の唯一音の出るお友達は日本から持ってきたソニーのワールドバンドレシーバー、通称GAGAくんでした。短波も中波も入るラジオです。これで日本の放送も聞けると思って持ってきたのでしょうが、結局聞いていたのは現地のラジオ曲。朝から晩まで部屋にいるときはずっと何か喋っていてくれました。とにかくこれしかなかったので、私はなんとか最大限に利用しようとしていました。よく登場する、気になる単語は辞書で綴りを調べて付箋に書き、壁に貼っていきました。その前を通りかかったら確認、覚えてしまったら剥がす、なんてやっていると、部屋は黄色く、いつもお祭りのように華やかでした。

もうひとつやっていたのが、音声に合わせて意味もさっぱりわからないまま、聞こえてきた声を聞こえてきたまま声に出して真似てみるということでした。まるで逃げていく龍の首につかまって空を飛んでいるかのように、始めのうちはあっけなくつるりと振り落とされてばかりで、全く歯が立ちませんでしたが、昔から英語の歌を聴きながら意味もわからずマネして歌うのは好きだったので、結構楽しんでやっていたように思います。

なんだか貧乏くさいやり方ですが、これが後に大変な効果を現してくるのです。始めはただの音の流れ、blahblahblahblahblah にしか聞こえなかったものが、数週間すると、blah blah blah blah blah になってきます。違いがわかりますか?さらにしばらくするとこれがblah blah blah and blah blah blah blah blah blah, and some more blah みたいにちょっとずつ意味の区切りが見えてくる。そして徐々にただのノイズだったものが単語に聞こえてきて、その意味がわからなかったら実際に辞書で調べることができるようになるのです。これがシャドーイングと呼ばれる、よく知られたテクニックだということを当時私は全く知りませんでした。ただ私のやっていたこの方法では、後で確認するためのテキストもなかったし、自分の喋ったことを録音して後で反省会をするなどということは一つもやっていませんでした。つまりほぼやりっぱなし。それでもその効果は周りの人を驚かせるほどでした。

さて、ラジオも世界各国のものが簡単に聞けるようになりました。私も今ではワールドバンドレシーバーを卒業し、時々Sonos のワイヤレススピーカーで日本の放送を聞いたりしています。パソコン上で直接世界各国のラジオ番組を聴くことも可能ですし、英語圏のポッドキャストを聴いたり、YouTube を利用したり、選択肢は沢山あります。

次回はままらにオススメの音源リンクと、シャドーイングについてもう少しお話ししてみたいと思います。